位置情報を基に「V・ファーレン長崎」のホームスタジアム周辺の人流を分析 ―スポーツツーリズムなどの観光・消費喚起策での活用に向けて、Jリーグの試合の集客効果や観光客の移動を可視化―

Cinarra Systems Japan株式会社(本社:東京都港区、CEO:細谷 正人)は、統計処理により十分に匿名化したソフトバンクWi-Fiスポットなどから得られる位置情報データを基に、長崎県のJリーグのチーム「V・ファーレン長崎」のホームスタジアム周辺の人流を分析しました。その結果、試合の開催による集客効果や、居住エリアに基づく観光客の移動を可視化し、スポーツツーリズムなどの観光・消費喚起策を検討する際に有益なデータを把握できることが分かりましたのでお知らせします。

V・ファーレン長崎のスタジアム分析

まず、「V・ファーレン長崎」のホームスタジアム「トランスコスモススタジアム長崎」周辺における人流の分析結果を紹介します。

 

スタジアムは、長崎県立総合運動公園の中に位置しています。周辺には大きな幹線道路があり複数の商業施設やレストランが存在する他、通勤や生活用の道路もあるため、試合が開催されていなくとも平日より休日の交通量が多い地域となっています。

スタジアム周辺の人流を把握することで、Jリーグの試合開催の影響を可視化することができました。試合が開催された日の人流が、開催されていない日よりも多いことが見て取れます。(図1)

図1:

縦軸:日別に集計した端末 ID のユニークカウント値
横軸:日付(2018年)

さらに、1日の中で時間帯別の人流を確認すると、試合開始(14時キックオフ)前の13時と終了後の16時に人流が増加していることが分かり、試合開始の1時間前に入場し、試合終了直後に帰路についていることを示すデータが得られました。14時と15時の人流が減少しているのは、スタジアムに滞在したままの状態で移動が記録されなかったためです。(図2)

 

図2:

縦軸:日別に集計した端末 ID のユニークカウント値
横軸:時間帯

県内・県外の観戦観光客の人流・動向分析

前節の人流を、位置情報と属性データ(居住エリア情報)を利用し、長崎県内居住者と県外居住者に分けて日別で集計したところ、割合はおおよそ4:1であることが分かりました。(図3)

図3:

縦軸:日別に集計した端末 ID のユニークカウント値
横軸:日付(2018年)

また、ホームでの試合開催日(図中点線箇所)は、県内・県外両方の観戦(観光)客が増加しており、Jリーグの試合が一定の集客効果があることが分かりました。

長崎県内における観光客の人流・動向分析

より詳細な人流・動向を把握するため、一例として清水エスパルス戦における長崎県内の各市からの観戦(観光)客の割合を地図上に可視化しました。(図4)

図4:

ホームスタジアムがある諫早市が半分以上を占めているものの、続いて長崎市、大村市、雲仙市の順で割合が大きく、地理的な要因が観戦に大きく影響を与えていることが分かりました。

一方で、佐世保市(長崎県内で人口が2番目の規模の市)からの観戦(観光)客が少ない結果となっており、県全体でみるとサポーターの分布に一定の偏りがあることをデータによって可視化することができました。

県内のスポーツツーリズムを活性化させるためには、佐世保市などスタジアムまで距離がある地域へのプロモーションなどが効果的ではないか、というヒントを得ることができました。

長崎県外からの観戦(観光客の人流・動向分析

前節と同様に清水エスパルス戦における各県からの観戦(観光)客の割合を見ると、福岡県からが3割以上を占め、続いて佐賀県、静岡県となりました。(図5)

図5:

対戦相手の清水エスパルスのホームタウンがある静岡県の観戦(観光)客の割合が相対的に高いことから、他の試合においても対戦相手のホームタウンからの観戦(観光)客が高くなると予想できます。

そこでデータ集計期間中に対戦した各チームのホームタウン(ベガルタ仙台:宮城県、川崎フロンターレ・横浜F・マリノス:神奈川県、ジュビロ磐田・清水エスパルス:静岡県)の観戦(観光)客の日別推移を可視化したところ、各試合ともに対戦相手のホームタウンからの人流が顕著に増加していることが分かりました。(図6)

図6:

縦軸:日別に集計した端末 ID のユニークカウント値
横軸:日付(2018年)

以上のように位置情報と属性データを分析することで、スポーツツーリズムによる観光客数への影響を定量的に把握することができました。

位置情報を用いた有益な分析

本分析では、ソフトバンクWi-Fiスポットなどから得られる位置情報を用いて「V・ファーレン長崎」のホームスタジアム周辺の人流と観戦(観光)客の動向を可視化することができました。

試合日程の情報を考慮することで、ホームゲーム開催時における集客数の動向を具体的な数値をもって示し、スポーツツーリズムによる県外からの集客力の有無や、県内からの観戦(観光)客の人数には地域差があることが明らかになりました。

位置情報を利活用することで、現状を客観的に把握できるとともに、新たな集客施策などを実施したときの効果検証に活用できる有益なデータを得られることが確認できました。また、この人流分析は、スポーツツーリズムのみならず幅広い分野での観光振興施策にも活用することが可能です。

 

付録 参考文献

一藤裕,山崎耕平,吉井英樹,岡本雅史,

位置登録情報を利用した観光客の動向分析 ~ V・ファーレン長崎スタジアム周辺の分析事例 ~,電子情報通信学会,LOIS研究会信学技報  Vol.118, No.485,pp.23-28  2019年3月

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