O2Oのアドテクを活用したマーケティング手法まとめ
マーケティング業界にO2O(Online to Offline / オー・ツー・オー)が登場してから久しいですが、その可能性や他の技術との連携による進化はとどまることを知りません。アドテクや位置情報技術の進歩が、O2Oマーケティングをより一層無視できない存在へと押し上げています。実店舗をもつ企業にとっては常に目が離せない存在となりました。
それでもアドテクノロジーに対して先進的な企業以外では、まだまだ活用しきれていないのが現状だと思います。今回は、そもそもO2Oとはどんなものかをおさらいしつつ、位置情報をかけ合わせたマーケティング事例などをご紹介していきます。
O2O(Online to Offline)とは?
O2Oとは「Online to Offline」の略です。その名の通り、オンラインからオフラインへの顧客の誘導を目的としたマーケティングの在り方です。
具体的には、ECサイトやポータルサイトなど企業のオンライン拠点から、さまざまなチャネルを経由して、実店舗などのオフラインの販売拠点に顧客を誘導する施策のことで、経由するチャネルは、位置情報やWi-Fiのアクセスポイントなど多岐に渡ります。
シナラは、それぞれのチャネルが及ぼす効果を計測できるソリューションを提供しています。
なぜO2Oが注目されているのか
なぜO2Oマーケティングが注目されているのでしょうか。2000年代後半からスマートフォンが普及し、個人端末でのGPSを使用した位置情報の取得が容易になりました。
さらには通信速度の高速化によってWiFi環境が充実してきたことも相まって、外出先でもインターネット環境に触れ続けている機会は格段に増えたことで、技術的にO2O施策を提供する環境が整ってきたことが要因として考えられます。
また、ユーザー視点では、ネット接続時間が増えたことにより、自身の興味と関係がないバナー広告やリスティング広告を目にする機会が多くなりました。
しかし、多くの広告情報はユーザーにとってはあまり有益ではなかったため、広告が嫌われてしまうようになってしまいました。それを解消するため、ユーザーに必要な情報を必要なタイミングで配信し、敬遠されることなく広告を閲覧してもらえる施策が模索されてきました。
O2Oが注目されるようになった背景には、このような技術的な進化とユーザー心理が影響しています。近年では、アプリを取得しているユーザーが店舗の近くに訪れた際にクーポンなどの情報をプッシュ通知したり、Wi-Fiアクセスポイントへのログインや、エリアに入ったユーザーに対して情報を送信できるサービスなど、利用シーンが広がっています。
オムニチャネルとO2Oの違い
O2Oと類似して語られることが多いビジネスモデルがオムニチャネルです。O2Oとオムニチャネルの大きな違いは、オフラインのみに販路を誘導しないことです。”Omni”とは「すべて」という意味なので、オムニチャネルというと“考えられるすべての販路を統合する”ということになります。
O2Oはオンラインからオフラインへの導線を考えるシンプルな構造ですが、オムニチャネルでは、実店舗やSNS、ECサイト、テレビ通販、カタログ通販、DMなどあらゆる販路や、お問い合わせ対応などCRMとも連携した融合を考える必要がありますので、実践するには販路を拡大するための体力や大きな企業規模が望ましく、全社的な企業戦略として取り組んでいく必要があるでしょう。
O2Oマーケティングで使える!デジタルを活用した集客手法
O2Oを実践するには、クーポン配信型、アプリゲーム型、SNSハッシュタグ型、NFC・QRコード・AR活用型などの集客手法が存在します。近年ではポップストア型の手法なども登場してきました。それぞれに特徴があるので、オンライン側とオフライン側の相性などを鑑みて、どのような施策が望ましいかを検討していきましょう。
1. クーポン配信型
自社配信のアプリやメルマガなどで実店舗のクーポンを配信し、来店してもらうという集客手法です。クーポン配信のメリットは、自社に対して既にアクティブなユーザーにリーチすることができる点です。また、クーポンの利用率は正確に分析することができ、次のマーケティング施策に繋げやすい部分も利点です。
日本では「マクドナルド/トクするケータイ」がO2Oの先駆けとして登場し、現在でも自社アプリや各社媒体でデジタルクーポンを配信しています。
シナラでも、位置情報に基づいた広告ターゲティングシステムを提供しています。
【事例出典:マクドナルド】
2. アプリゲーム型
ゲーム性の高い内容のコンテンツ、もしくはゲームそのものをプレイしてもらい、クリア等の条件や広告配信でクーポンや応募券などを提供する手法です。アプリゲーム型ではダイレクトな販促施策というよりも、コンテンツの話題性やブランド認知などの短期キャンペーンとしての施策が少なくありません。
ご紹介するのは2018年の新卒者をターゲットとした森永製菓(株)のウィダーインゼリーの特設サイトです。デジタルネイティブ世代向けのコンテンツではありますが、ピコピコゲームのようなレトロデザインが話題になりました。認知を目的としたサイトですがこのゲームをきっかけにしてウィダインゼリーを購入するというカスタマージャーニーがみえてきます。
【事例出典:森永製菓株式会社】
3. NFC・QRコード・Bluetooth型
NFC(近距離無線通信)やQRコード、Bluetoothによるマーケティング手法はその手軽さからかなり普及しています。通信的に便利なNFCですが、iPhoneではiOS11から「Core-NFC」が対応されるなど端末側での普及がいまいちなのが現状です。世界的にはQRコードのほうが普及しており、中国やインドなどではQRコードを利用したキャッシュレス決済がかなり普及しています。
Bluetoothを使用した事例では、日本コカ・コーラ(株)の提供している「Coke ON(コーク オン)」です。日本コカ・コーラが提供するアプリと自動販売機をBluetoothで接続した状態でドリンクを購入することでスタンプを貯め、15個貯まると無料ドリンクチケットがもらえるサービスです。
【事例出典:コカ・コーラ】
4. SNSハッシュタグ連動型
リアルタイム性の高いイベントやファンマーケティングでのクチコミで効果的なSNSハッシュタグ連動型のマーケティング手法。飲食店に来店した際にfacebookページへの「いいね」や指定のハッシュタグでのtwitterやinstagramへの投稿を促すなどが主な方法です。誰かに伝えたくなる魅力あるイベントで、さらに発信力のあるインフルエンサーが投稿してくれればとても効果のある手法です。
【事例出典:NONAME Produce】
5.ポップアップストア型
近年注目されているのはポップアップストア型のマーケティングです。ポップアップストアとは貸しスペース等に期間限定で出現する店舗のことです。短ければ週末限定、長くても数ヶ月限定だけ、注目度の高いエリアや場所に出店。その様子をSNSやハッシュタグと連動して話題を集めてプロモーション展開する手法です。実店鋪の手法でもありますが、ECサイトとしてオンライン上でのポップアップストアの展開する事例もあり注目度が高まっています。
【事例出典:バズーカ】
位置情報連携で広がるO2Oの可能性
O2Oを実践するポイントのひとつとして位置情報を利用したサービスがあります。GPSを利用した位置情報の取得はWi-Fiを有効にすることで、携帯基地局の位置情報との組み合わせで、さらに精度の高い位置検出が可能になります。
2018年時点でのWi-Fi環境の普及・利用状況は、2017年に(株)ICT総研より発表された「公衆無線LANサービス利用者動向調査」に書かれています。多くの人はカフェや飲食店などの場所で公衆無線LANを利用しており、利用場所の多さでSoftBankのアクセスポイントの満足度が増加しています。
位置情報を活用した、O2Oのマーケティング成功事例4選
1. 食品系スーパーマーケットの事例
新聞折込チラシの影響力が年々薄れるなか、スーパーマーケットの集客もデジタルシフトを強いられています。杉並区と江東区に店舗をもつスーパーマーケットチェーンは、シナラの「PEAL PEOPLE」を使って、1人を来店させるのにいくらのコストがかかったのか検証しました。
結果、来店あたりのコストがもっとも下がるのは店舗の周辺で、cost per walkin = 129でした。
2. ユニクロの事例
ファストファッションの大手「ユニクロ」では、コミュニケーションアプリのLINE(株)と連携したO2Oサービスをいくつか提供していますが、位置情報を活用した事例ではLINE Beaconから店舗周辺のユーザーにLINEを介してクーポンやセール情報などのプッシュ通信を行っています。
ただ、ユニクロは全体戦略としてオムニチャネル化を目指しているので、位置情報を活用したO2O施策はその一部でしかありません。
3. 無印良品の事例
(株)良品計画が展開する無印良品では、オンラインショップよりも実店舗での買い物を好む傾向があるという自社顧客ニーズをもとにしたO2O施策を実施しています。
スマホアプリ「MUJI passport」では、チェックイン機能により来店スタンプとポイントを貯めることができ、貯まったポイントを購入時に使用することができます。
4. セブンネットの事例
大手小売業の雄であるセブン&アイホールディングスでも「omni7」の名でオムニチャネル化を推進しています。ネットショッピングサイトのセブンネットで実施されているO2Oは全体施策の一部でしかありません。
O2O施策としては、セブンネット等で注文した商品の受取りや返品が国内20,000店以上を展開するセブンイレブンで送料・手数料無料でできるサービスを展開しています。店舗にユーザーが足を運んでくれることで“ついで買い”が生まれたり、ポイントの貯まった「nanacoカード」利用してもらうことが期待できます。
まとめ
総務省や観光庁は、防災やインバウンドの観点から、2020年までに国内の公衆無線LAN(Wi-Fi)環境を整備を官民連携して推進していく方針をとっています。Wi-Fi環境が充実して、より高精度な位置情報が取得できるようになれば、O2Oマーケティングはますます盛り上がっていきますよね。
今後もO2Oマーケティングから目が離せません。
追伸:
従来のWEB広告媒体での広告接触がどれだけ来店に寄与したか計